2014年08月09日

MOOSIC LAB 2014審査員選評VOL.3:松本CINEMAセレクト/溝口徹(横川シネマ!!)、田中誠一(立誠シネマプロジェクト)、大下直人(Kisssh-Kissssh映画祭)

審査員講評、その3です。

INPO法人コミュニティシネマ松本CINEMAセレクト(宮嵜・後町・飯岡)
グランプリ=該当なし|準グランプリ=イルカ少女ダ、私ハ、QOQ、恋文X(以上、3作品)|特別賞=ほったまるびより|ベストミュージシャン賞=カネコアヤノ(恋文X)|ミュージシャン賞=柴田聡子(ほったまるびより)、TADZIO(NOBIDORANDO)|最優秀女優賞=吉岡里帆(イルカ少女ダ、私ハ)|女優賞=カネコアヤノ(恋文X)、岡野真也(恋文X)|最優秀男優賞=ケツ(QOQ)、馬と魚(QOQ)|男優賞=該当なし、該当なし


 松本CINEMAセレクトでは、前回同様3名が全作品を鑑賞し選定を行ったが、「グランプリなし」は全員一致で即決した。「MOOSIC LAB」は本来、「映画と音楽のコラボレーションによる実験室」を謳っていたはずだが、前回とは異なりその枠を飛び越える作品がなかっただけでなく、その枠を満たしている作品もきわめて少なかったのは残念だった。
 相対的には「映画と音楽のコラボレーション」を実現している作品として、『イルカ少女ダ、私ハ。』『恋文X』『QOQ』の3作を準グランプリに選出したが、いずれも、決定的な驚きを欠いており、新しい才能との遭遇として私たちを興奮させてくれる作品ではなかった。あえて挙げるならば、3作のなかではもっとも(良い意味で)未完成で「MOOSIC LAB」らしい『イルカ少女ダ、私ハ。』にいくらか清新さを感じたが、それも主演女優の吉岡里帆の魅力に負うところが大きい。
 律儀に「映画と音楽のコラボレーション」に取り組み、器用にまとめ上げた『恋文X』を印象深くさせているのはヒロイン2人(実際カネコアヤノの「発見」は今年の数少ない収穫の1つだろう)の魅力によるとことが多いだろうし、私たちの選からはもれたが、『おばけ』の佐藤玲や『おんなのこきらい』の森川葵など、女優については今後「MOOSIC LAB」の枠外での活躍が期待できる新しい顔と出会うことができた。
 男優については、『QOQ』の主演2人が、「MOOSIC LAB」では目新しい関西弁による掛け合いで印象に残ったが、「MOOSIC LAB」の枠外での活躍が容易には想像できない。また、そのほかの作品の男優にも、「MOOSIC LAB」の枠外で撮られた作品を見てみたいと思わせる者はいなかった。
 今回、ミュージシャンの持つ魅力や、その音楽に真剣に対峙していると感じられる作品は少なかった。そんななか、カネコアヤノ(『恋文X』)の歌はセリフと同等の強度を持ち、みずから輝くと共に作品を輝かせていた。柴田聡子(『ほったまる日和』)、TADZIO(『NOBIDORANDO』)は、その音楽性が作品の指向に関わっており、他の作品のミュージシャンと比べ、魅力を発揮していた。
 私たちが「MOOSIC LAB」に期待しているのは、通常の映画祭や映像祭では選外となってしまうような新奇な才能の「発見」である。それを可能にしていたのが「映画と音楽のコラボレーションによる実験室」という枠だったはずだが、今回はその枠が機能していないように感じられる作品が多かった。「MOOSIC LAB」が今後も続くのであれば、しっかりとその枠=〈しばり〉のなかでの競い合いを見てみたい。

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J溝口徹(広島/横川シネマ!!)

グランプリ=QOQ|準グランプリ=おんなのこきらい|特別賞=遊びのあと|ベストミュージシャン賞=ふぇのたす(おんなのこきらい)|ミュージシャン賞=カネコアヤノ(恋文X)、GOMESS(遊びのあと)|最優秀女優賞=和田光沙(あんこまん)|女優賞=佐藤玲(おばけ)、吉岡里帆(イルカ少女ダ、私ハ)|最優秀男優賞=ケツ(QOQ)|男優賞=馬と魚(QOQ)、中村祐太郎(あんこまん)


 直井Pの“ドクター・モローの島”こと“MOOSIC LAB”コンペも審査員3年目。昨年の『トムソーヤーとハックルベリーフィンは死んだ』のご縁で、なぜか今夏を東京のある工場で『労働者階級の悪役』として過ごしている僕も、少なからずこの企画の歴史に人生を翻弄されている人間と言えるでしょう。果たして、昨年と今年のMOOSIC LABには、昭和ライダーと平成ライダーくらいのギャップを覚えつつ、興味深く拝見しました。
 カメラの適度な距離感に疑いを覚えるくらいにGOMESSの存在感に興味を惹かれた『遊びのあと』の特別賞のみ即決。グランプリについて『あんこまん』『恋文X』『おばけ』『おんなのこきらい』『QOQ』まで絞るも、そこから決め手を見つけられず、最終週で唯一空席が目立ってた『QOQ』の愛おしさでいいやー。と、なりました(嘘)。ただ、押し並べてなんか皆、承認欲求が強いなぁというのが、気になってます。

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K大下直人(Kisssh-Kissssh映画祭)

グランプリ=ほったまるびより|準グランプリ=おんなのこきらい|特別賞=QOQ|ベストミュージシャン賞=挫・人間(おばけ)|ミュージシャン賞=ふぇのたす(おんなのこきらい)、カネコアヤノ(恋文X)|最優秀女優賞=佐藤玲(おばけ)|女優賞=柴田聡子(ほったまるびより)、森川葵(おんなのこきらい)|最優秀男優賞=ケツ(QOQ)|男優賞=中村祐太郎(あんこまん)、荒谷清水(寝床より愛をこめて)

昨年度が『キングコングvsゴジラ』等のvsものだとしたら、今年のMOOSICは超混戦、いうなれば『怪獣総進撃』です。なので審査には相当迷いました。「断腸の思い」なんて超えて、臓器全てが破裂するような思いで作品を選びました。でも、もっと残虐になってほしかった!!MOOSICという怪獣達には「音楽映画」とか「MV」とかいうつまらない枠組みや概念を破壊しつくしてほしいのです!!!

■ほったまる日和
これぞMOOSICな作品だと思います。映画と音楽が交じり合い、理解を超えた何かがありました。ある種グロテスクなコンテンポラリーダンスと柴田さんのフェティッシュな歌声が溶け合い、古民家特有の異質感、不気味さを体現した映画だと捉えています。きっと僕の長野の婆ちゃん家にもあの踊り子達がいて、ほったまっていると確信しています。もう、柴田さんと声も踊り子たちの躍動する身体も永遠に観ていたい!

■おんなのこきらい
可愛いの残虐性を堪能できる、可愛いの地獄巡りムービーでした。「可愛い」はもはや呪いであり、恐ろしいものなんだという事を痛感。特に後半、アナ雪的な「ありのままで〜」みたいなオチなるかと思いきや、「結局可愛いほうがいいよね」と可愛いの壁が立ちはだかるなんて血も涙もない!あとふぇのたすのマカロンのようなポップで可愛い音楽によってさらに毒っ気を増幅させています。これは可愛い残虐物語だ!

■QOQ
ドライな笑いとけだるい空気がたまらない。個人的には山下敦弘監督のダメ男三部作を思い出したました。はい、好きです!二人のボンクラ男と、ゆうなさんとのやり取りも愛くるしい。やっぱ、好きやねん。もう一度劇場で会いたいと思えます。何よりも黒田監督の「音楽映画つくりたいけどしっくり来るアーティストいないから自分でプロデュースするわ」この気概は評価せざるを得ません。

■おばけ
佐藤玲さんの顔、唇、ピアス、彼女の存在感でこの映画の大半が構成されていると確信しています。あと、月見ル君想フでの挫・人間のライブシーンは圧巻の一言。正直サブカルこじらせバンドと思って舐めていました。しかし、今ではあのねっとりとした歌声にはまり、エンドレスリピートしています。あと、Kisssh-Kissssssh映画祭では野外上映を行っていることもあり、「外で観たくなる映画」を考えた結果、今作を選びました。観念的な言葉が飛び交い、夢想的なカットが繰り出される映画は、星空の下映画を観る不安定な上映空間に相応しいんじゃないかと!!

■遊びのあと
いい意味で優しくない映画ですね。観客の思考に多くを委ねられている作品だと感じました。間違ってもしょっぱいドキュメンタリーなんかではないです。自分としては「人生全ては暇つぶしの遊び」という言葉をふと思い出しました。

■NOBIDORANDO
ライブシーンがまずクール過!TADIZOに関しては前知識ゼロだったからスチール見た段階では艶っぽいライブなのかと考えていました。でも蓋を開けてみたら女性の狂気、暴力性が充満していて驚きました。カット数刻んで手元、顔など身体の一部を強調していてフェチ&クール。他人から語られる「武勇伝」そしてそれに対してのレスポンスとしてのライブ、構築される異質感が心地よい!

■キッチンドライブ
前半はヒリヒリとするような男女の圧倒的な断絶性、埋めることのできない距離感をリビングとキッチンという位置関係によって描き方が好印象。ただ、それまでの映画のトーンと違う人たちが次々と登場し目がくらくらしました。舞台に耐性がない自分は胸焼け寸前でしたね。

■恋文X
This is ボーイミーツガールムービー。男女4人の物語が交錯し、クレイジーな青春が生まれる気持ち良い映画。ただ、ご都合主義な展開(引越しトラックに追いつくくだり)、不自然な市役所ライブ、デジャブ感満載の話運びが気になりましたが、カネコアヤノさんの音楽が全てを吹っ飛ばしてくれました。全然そんなの関係ない!!映画館からの帰り道、きっとカネコアヤノ氏の歌を口ぶさみたくなる事間違いなし!

■イルカ少女ダ、私ハ。
最強VFXとやまのいゆずるの楽曲によって夢想的な気分に。でも、イルカ少女にとってはこれがリアルなんでしょうね、きっと!!終盤のMOOSIC初の音楽バトルシーンは要必見、ここの音楽が相当気持ちいいので絶対劇場で観るべきですね。

■これは僕がアカシックというバンドを撮ったドキュメンタリーである。
アカシックに向けていたカメラが次第に自分自身に向けられるのでタイトルは詐欺です。ナルスティックで内省的な横山監督がボンクラな自分をぶっ壊す為、トラクターの自分と対話するシーンは胸が熱くなることは不可避。でも、本当の成長はピー音の先にあるかと…。応援しています、横山監督!!

■寝床から愛をこめて
これも一種の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』だ!!!夢ループをひたすら繰り返す荒谷氏は和製トムクルーズや!!1本で7〜8作品観た気になるお得映画。ただ、もっとループものとしてエポックメイキングな何かが欲しかったです。

■あんこまん
劇中に現れる裸体とその交わりににエロさではなく生命の神秘を感じました。これが中村監督の力量や…。あと個人的には今作品は飯の印象が強いです。とにかく飯を食う、作る、カレーを塗りたくる!食事とは性行為だ、人との関係性の構築なんだと痛感。

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L田中誠一(京都/立誠シネマプロジェクト 支配人)

グランプリ=QOQ|準グランプリ=あんこまん|特別賞=遊びのあと|ベストミュージシャン賞=TADZIO(NOBIDORANDO)|ミュージシャン賞=GOMESS(遊びのあと)、町あかり(あんこまん)|最優秀女優賞=和田光沙(あんこまん)|女優賞=森川葵(おんなのこきらい)、佐藤玲(おばけ)|最優秀男優賞=ケツ、馬と魚、坂元ゆうな(以上、QOQ)|男優賞=佐藤亮(おばけ)荒谷清水(寝床より愛をこめて)


作り手のスタンスとミュージシャンの表現とキャストのリアルが分かちがたく作品と結びついている、そんなことを感じられるものが選に入りました。『QOQ』はまさにこの次を観たいと思わせる作品でしたが、QOQだけが奏でられる音楽が聞こえてくる手前で終わってしまったことに惜しさを感じます。奇跡的なものを求めてしまう因果な私です。『あんこまん』は個人的には好きでなはい。が、こうでしか描けないものが画と音で確かに描かれていました。TADZIOは圧倒的だしGOMESSは最高。でも映画と音楽が組んで生まれる「何か」が足りない。『遊びのあと』には忘れがたい時間があった。『ほったまる日和』はちょっと次元が違いました。のでオリジナルの賞をあげたい。顔がよく撮れている『おばけ』、とても清々しい『おんなのこきらい』、異星からやってきたような『イルカ少女ダ、私ハ』は多くのことが語れる作品でしたが、映画と音楽の奇跡的な何か、を基準にすると選外となりました。というように、MOOSICとは何なのか、をあらためて考えさせられる今年度となったように思います。僕的には最強のMOOSICは大林宣彦監督の『なごり雪』なんですけどね。

(つづく)

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■MOOSIC LAB 2014 名古屋編
2014年8月9日(土)〜オープニングイベント@spazio rita(15:00)→上映@シネマスコーレ(20:00)
→|詳細!

■MOOSIC LAB 2014 アンコール上映
8月16日 土 QOQ/おんなのこきらい K's cinema
8月17日 日 NOBIDORANDO/あんこまん K's cinema
8月18日 月 イルカ少女ダ、私ハ。/恋文X K's cinema
8月19日 火 遊びのあと/おばけ/寝床より愛をこめて K's cinema
8月20日 水 これ僕アカシック/おんなのこきらい K's cinema
8月21日 木 ほったまるびより/キッチンドライブ K's cinema
8月22日 金 QOQ/あんこまん K's cinema

■MOOSIC SUMMER FEST 2014
8月25日(月)Shibuya WWW 17:00-
上映:NOBIDORANDO/おんなのこきらい
LIVE:町あかり / 挫・人間 / カネコアヤノ / いずこねこ/ 大森靖子
→|詳細!
posted by staff at 01:46| ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする